【コラム】「越境経験学習による探究プログラム」におけるHuman abundanceの役割とは

 

Human abundanceは職場外学習の中でどのような役割を担うか

Human abundanceは、職場におけるイノベーション人材をどのように育成するのかをテーマに掲げた教育カリキュラムを提供している。

企業の基本的な役割が変化する中、企業で働く人材は、社会問題や今ある我々の諸問題に対処しながら、ビジネスを進めていかねばならなくなった。社会問題には見過ごすことができなくなった環境問題がある。そして、環境問題を内包している地域社会問題にも目を配る重要性が非常に高まっている。

2000代以降、コスト削減の方法として組織内への資本投下が減り、Off-JTの教育が減少し、OJT中心の企業内訓練に偏重してきている日本企業の能力開発において、どのような学習機会によってイノベーション人材を育成していくのかは、大きなテーマである。

Human abundanceは、そのイノベーション人材を職場外学習というワークプレイスラーニングによる越境経験学習機会を提供している。職場外での経験や教育機会から内省することによる学習機会である。

その学習機会をどのようにHuman abundanceでは設計しているか、3つのポイントを示す。

 

「職場学習を成功させる3つの要素」

この学習は、行動変容に対する再現性を高くする成果がある。創造性高く、他社には真似をできないノウハウがカリキュラムの魅力を高めている。

では、そのカリキュラムの基礎的な3つの構成要素と特徴について紹介する。

地域資源の理解

Druckerは、「ポスト資本主義社会とポスト資本主義政治体制に伴うさまざまな課題、機会、問題は、その発生の地においてのみ扱うことができる」(Drucker, 1993, p. 19)と指摘している。Druckerの指摘である、課題や問題は発生の地においてのみ扱うことができるとするならば、企業は少なくとも環境課題が発生している現場に訪れ、実践的な洞察をすることによって、解決すべき問題として具体的に認識すべきである。そのために、職場外の地域に赴くカリキュラムを職場外学習に組み込んでいる。

Human abundanceは地域の特異性、ユニークさ、抱えている課題について適切な理解を行う。この情報を体系的に得ることができるのは、地域の受け入れ組織とのネットワークがあることが非常に重要である。地域の受入組織は、行政組織の一部の所轄部署の場合、DMOや一般社団法人、NPO、NGO、協議体さまざまである。この受入組織の形式の多様性はひとつの地域特性でもある。

地域の受け入れ組織との連携により、地域住民、地元事業者、行政とコミュニケーションをとり、マクロ、ミクロの視点で地域理解を深めていく。

ひとつの地域のみの理解ではなく、日本全国の多くの地域とのネットワークを構築しながら、クライアントのニーズに合致した地域選択を行い、教育カリキュラムを組めることがHuman abundanceの特徴である。

 

クライアントの理解

Human abundanceでは、教育研修の依頼をしていただくクライアントの理解を適切に行う。どのような背景があり現在の課題認識に至っているのか、これまでどのような施策を実施してきたのか。どのような人材を求めているのかについて、丁寧にインタビューを実施する。顕在化されていない課題についても、これまでのHuman abundanceの人材教育の取り組みをベースに浮き彫りにすることによって、クライアントのニーズの理解を深めていく。このニーズの深堀から、教育のテーマ、目的、目標を決定する。

クライアントの理解を深める理由は、職場外学習は、対象者の組織風土や専門性、これまでの経験に関連付けて行われなければ、効果は期待できないからであり、クライアントの理解なしには、職場外学習は進めることはできない。

適切な技術

Human abundanceは情報を教えることではなく、興味を刺激し、継続的な学習を促す役割を担う。学習は、なぜこのテーマについて学ぶ必要があるのか、現在学習のどの位置にいるのかを適宜情報を伝えることによって、学習の道筋を示す。

職場外学習におけるインプット学習は、クライアントの理解に基づき、フィールドワークにつながる情報を提供し、情報のフォーカシング作業を行うことが重要である。情報のフォーカシングは、テーマの全体像を俯瞰してみることができるようにする。これは大学教授や、科学館、博物館の学芸員、その他の専門家と連携できることにより実現することができる。

職場外学習における洞察は、エスノグラフィーの技術を共有し、五感を通した実践を通じて実施する。

インプットとアウトプットを組み合わせ、経験と概念化を繰り返すインタープリテーションをHuman abundanceが担う。

出典:古瀬浩史(2014)「インタープリターを育てるために」P.138を参考にHuman abundance作成

インタープリテーションについての説明を加えると、「インタープリター」は国立公園の来訪者に対する案内や教育・普及活動を専門に行っている部署を指す。その技術を応用した地域と企業の媒介者としての役割をインタープリテーションとHuman abundanceは定義している。

「インタープリテーションのポイント」

  • 直接体験と間接経験(事前インプット学習)を活用して、事物や事象の背後にある意味や相互連関を解き明かす
  • 参加者が地域資源や地域課題に内在する意味や重要性を知的、感情的に結びつけられるようにする
  • 日常の専門領域とは異なる領域を分かりやすく解釈できるように伝え、参加者が楽しく、興味がひかれるように運営する

 

職場外学習を内製化できるかどうか

コスト削減なのか、人材ノウハウの蓄積を目的にしたものか、人材育成の内製化というキーワードを見ることが多くなった。たしかに、新人研修のマナーなどの教育は、内製化することも可能ではある。

では、この職場外学習について、内製化は可能なのであろうか、その答えはイエスでもノーでもある。職場外学習が実現可能な要素としては、社内にインタープリテーションを実践できる人材が育成されているかどうかが重要な要素である。高いレベルでのインタープリテーションを必要としない職場外学習でも内製化が可能であろう。例えば、「多様な価値観に触れる視野拡大」というようなテーマと目標が大きな枠組みで捉えられるようなケースである。そのようなケースでは、地域とのネットワークなどがあれば、Human abundanceのようなインタープリテーションを媒介せずとも、目標とする教育効果を実現することも可能である。

下記にHuman abundanceが提供するカリキュラムを示す。この図における左下の領域、Fundamental×personalの領域が比較的内製化を目指しやすいだろう。ただし、地域との関わり、また、受講者のメタ認知をどのように引き出すかなどの技術が必要であることは共有する。

「ステージに応じて選択できるHuman abundanceイノベーションカリキュラム」

出典:Human abundanceにて作成

 

まとめ

職場外学習におけるインタープリテーションの重要性について説明してきた。子供が行う体験教育は、五感を使った人材育成要素が強い。自然とのかかわりはアイデンティティの確立において重要な要素であると考える。一方、企業が行う職場外学習は、職場で活躍できる人材育成であり、能力開発である。その目的に応じたインタープリテーションを行うのが、Human abundanceの役割である。

 

担当:川九

 

参考資料

Drucker, Peter F. (1993) POST-CAPITALIST SOCIETY, Harper Business. (上田惇正訳(2007)『ポスト資本主義社会』ダイヤモンド社.)
Tilden,F. (1957)Interpreting our heritage. Chapel Hill, NC: The University North Carolina Press.
キャサリーン レニエ, ロン ジマーマン, マイケル グロス, Kathleen Regnier著『インタープリテーション入門―自然解説技術ハンドブック』小学館.
古瀬浩史(2014)「インタープリターを育てるために」津村俊充・増田直広・小林毅『インタープリター・トレーニング』pp.138-149,ナカニシヤ出版.