【コラム】SDGsと人事・人材育成(丸井グループ編)-人的資本を軸にした資本の好循環サイクル
SDGs and HR/Human Resource Development MARUI version
-virtuous cycle of capital based on human capital
丸井グループ-maruigroup website-
今回取り上げるのは、商業施設のマルイやモディでおなじみの丸井グループです。1931年に創業し、金融と小売のサービスを組み合わせたビジネス手法が特徴です。はじめて作ったクレジットカードが丸井のカードだった、という人も多いのではないでしょうか。近年ではフィンテック事業にも力を入れ、変化しながら独自のビジネスを確立しています。
ビジョン2050 | サステナビリティ | 丸井グループ-maruigroup website-
大きく取り上げられているのは、インクルージョン(包括)の考え方です。誰一人置き去りにしないというSDGsの主要な考え方の一つを、より深く受け止めていることがわかります。多数派向けの事業展開や商品開発を続けてきた結果、少数派が取り残されてしまった反省を生かしたものです。社会の分断や個人の孤立がより深刻なものになる前に対策を取り、さらにビジネスチャンスに繋げていこうという気概か読み取れます。
2050年の未来予想は、とても読み応えのあるものになっています。
・「私らしさ」を求めながらも、「つながり」を重視する世界
・世界中の中間・低所得層に応えるグローバルな巨大新市場が出現する世界
・地球環境と共存するビジネスが主流になる世界
新たな成長に向けた「人材への投資」 | 重点テーマ2 | サステナビリティ | 丸井グループ-maruigroup website-
そのような未来のために、今行う人事・人材育成とはどのようなものなのでしょうか。丸井グループでは、求める人物像を「共感する力をベースに、革新する力を合わせ持つ人」と定義しています。
そのために、最初は売り場に配属し、その後は「職種変更」と呼ばれるグループ会社間の人事異動を行っています。売り場に立つことでお客様への共感力を養い、職種変更を行うことで変化への対応力や複合的なスキルを身に着け、革新につなげるのが目的です。
丸井グループの事業は、小売業以外にも多岐にわたります。クレジットカードやフィンテックのエポスカード、情報システム事業のエムアンドシーシステム、総合ビルマネジメントの丸井ファシリティーズ、物流やネット通販サポートのムービングなどです。持ち株会社で一括して採用を行い、どの事業会社にも同じ人事制度が適用されます。幅広く異動を行い、キャリアパスの選択肢が多いため、膨大な人事データを扱います。経験や実績だけでなく、本人の希望や自己申告の履歴など、職種変更とマッチングに必要な情報が広く共有されることが必要です。マネジメントシステムを導入し、タグ付けを活用した精度の向上を図っています。丸井グループの石岡治郎氏は、次のように述べています。
「これからますます加速する環境変化を考えると、画一的な基準で異動配置を決めることは、本人にとっても会社にとっても限界があると考えています。だからこそ、社員一人ひとりをしっかり見つめ、その人に合ったタイミングで職変を経験してもらうことが、最も成長につながるのではないかと感じています。」
(自己申告による「職変」活性化 - パーソル総合研究所 https://rc.persol-group.co.jp/talent-management/hito-talent/case/marui.htmlより引用)
丸井グループの取り組みとして、「手挙げ」の文化もユニークです。経営陣が集まる中期経営推進会議の革新をきっかけに、研修や昇進、全社横断型のプロジェクトへの参加などはすべて社員の自主的な応募による形に変更されました。丸井グループの小島玲子氏は、次のように語っています。
「時代の変化もあって、自ら考え、自ら行動する人を増やす必要が生まれてきたというのが、『手挙げ』を推進している理由としてあります。(中略)このままでは企業が生き残れないという危機感の下、組織風土を本気で変えなければならないという背景があり、10年以上かけて「手挙げ」の浸透に取り組んでいます。」
(CHROインタビュー Vol.5 丸井グループ・小島玲子、石岡治郎「事業成長を形づくるウェルビーイング経営と「手挙げ」の文化」https://co-consortium.persol-career.co.jp/article/2022/05/27/01/index.html より引用)
別の記事では、採用活動における変化があると石岡氏が語っています。
「学生のみなさんの企業選びの軸です。これまでは業種・業界軸がほとんどでしたが、最近では企業理念や社会貢献度というような軸で企業を選ばれる学生さんが増えてきました。丸井グループは、社会課題をビジネスを通じて解決することを目指しておりますので、このような軸で企業を探している学生さんニーズにマッチするのではないかと感じています。」
(全社員の7割が異動・職種変更を経験──なぜ、丸井グループでは積極的な人事異動が行われるのか? | リクナビNEXTジャーナル https://next.rikunabi.com/journal/2021213_c01/ より引用)
取り組みそのものを評価する指標が、今後より具体的に提示されるよう期待できます。