【コラム】SDGsと人事・人材育成(オムロン編)-人的資本を軸にした資本の好循環サイクル

 

SDGs and HR/Human Resource Development OMRON
-virtuous cycle of capital based on human capital

オムロン https://www.omron.com/jp/ja/

オムロン長期ビジョンShaping the Future 2030 Empowering People Through Automation オムロンは、人が活きるオートメーションでソーシャルニーズを創造しつづけ個人の幸せと豊かな社会が両立する未来をつくります。ちょっとワクワクしませんか? 詳しくはこちら

オムロンは、前身である立石電機の創業から来年で90年を迎えます。
一般の消費者には、体温計や血圧計などを手掛けるメーカーとして知られています。
また、自動券売機や自動改札機、ATMなどをいち早く開発・製造したベンチャー精神を受け継いだ企業です。
近年では、独自の未来予測手法である「SINIC理論」が注目を集めています。

Shaping the Future 2030 | オムロン https://www.omron.com/jp/ja/sf2030/

2022年3月、オムロンは新長期ビジョン「Shaping the future 2030」を発表しました。現在を「最適化社会」と位置づけ、来るべき「自律社会」に向けた方向性を示しています。
オムロンが掲げる人事・人材育成とはどのようなものなのでしょうか。オムロンの取り組みは、「戦略人事」と呼ばれています。
人事の動きが経営と深く連動しているのが特徴で、企業を取り巻く環境の変化により迅速に対応することが可能です。

オムロン、人的資本を「見える化」 | 日経ESG

今年5月には、今後3年間で人材開発へ60億円の投資を行うと発表しました。

■ オムロンは「人的創造性」を指標に人材戦略を進める TOGA:The OMRON Global Awards 人的創造性:人件費当たり付加価値額<br><span class="fontSizeS">(出所:オムロンの資料を基に作成)</span>https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00005/052400217/

注目すべきは、人材戦略の成果を測る指標を設定したことです。
人件費あたりの付加価値額を「人的創造性」と名付け、2024年度には7パーセント上昇させる目標を掲げています。

イノベーション | オムロン https://www.omron.com/jp/ja/innovation/

そのような戦略を推し進めるエンジンが、2018年につくられた「イノベーション推進本部」です。
イノベーション推進本部では、新規事業の創造と、土台となる組織の変革、新たな価値創造に貢献する人材の育成を行います。
社内外から志のある人材を集めるプラットフォームという形態です。

私たちの組織と人財 | オムロン https://www.omron.com/jp/ja/innovation/assets/

このような形になったのは、オムロンならではの理由がありました。
オムロンの石原英貴氏は、以下のように述べています。

オムロンは現在、ファクトリーオートメーションにおけるPLC(Programable Logic Controller)やヘルスケアでの家庭用血圧計などの様々な約60の事業部の集まりである。オムロンは、創業以来、このような様々な社会的課題を解決する事業を立ち上げてきており、「約60のベンチャー企業から成る集合体」とも言える。今後も、ベンチャーの集合体として活力維持し成長していくためには、新たな社会的課題を解決する多くのトライ&エラーを繰り返しながら新事業を創出することが不可欠である。

しかし、これまでの延長線にない新たな領域での事業をP/L責任のある既存の「縦割り」の事業部門の中で考えることは、リスクが大きく難しくなっている。

そこで、2015年にCTO(Chief Technology Officer)のポジションをつくり、個別の事業部門ではなく、CTOの直下に集約し経営トップのコミットメントの基で新事業の創出を実行する体制とした。CTOの役割は、社会的課題・技術革新・ビジネスモデルの進化などから、具体的な近未来像を描き、そこからの「バックキャスト」で事業・技術・知財戦略を立案実行することである。

(イノベーティブな組織を作る人材戦略⑤ オムロン | イノベーション会議 | 生産性運動について | 公益財団法人日本生産性本部
https://www.jpc-net.jp/movement/committee/detail/post_12.html より引用)

イノベーション推進本部で育った人材は2~3年で元の部署や各事業部門に「輩出」されます。
全社的な革新を引っ張っていく原動力となるわけです。

The OMRON Global Awards(TOGA) | 企業理念経営について | 会社案内 | オムロン

また、ユニークな取り組みとして、TOGAと呼ばれる表彰制度が挙げられます。

表出 有言実行 共鳴 1.旗を立てる 2.宣言する 3.実行する 4.振り返り、共有する 5.共鳴する

https://www.omron.com/jp/ja/about/corporate/vision/initiative/#

社内での取り組みを表彰するものですが、評価軸がユニークです。
利益や事業可能性ではなく、企業理念の実践度合いが第一に評価されます。

企業理念 | オムロン https://www.omron.com/jp/ja/vision/#

オムロンの企業理念は、二つの構成要素があります。
Our Mission (社憲)とOur Valuesです。
企業理念と自分たちの仕事とのつながりを見出し、共有していくプロセスこそが大事だとオムロンの冨田 雅彦氏は述べています。
このバリューを社員一人一人が体現するために、平易な言葉を使うようにしています。たとえば、「ソーシャルニーズの創造」において、世に先駆けて新たな価値を創造し続けるために、「未来志向で社会を捉えているか?」「『なぜ』『何のため』を考えることを習慣化しているか?」「これまでと違う新たな方法を試しているか?」といった形で自問自答します。

このようにバリューを平易な言葉に落とし込み、自分たちの行動に生かしています。

(【イベントレポート】全社表彰制度TOGAから紐解く、オムロンの企業理念経営の実践 | BizReach withHR https://media.bizreach.biz/39699/

より引用)

細分化された事業領域を生かしつつ、求心力を持ったイノベーションに取り組むオムロンの例でした。