【コラム】SDGsと人事・人材育成(SOMPOグループ編 )-人的資本を軸にした資本の好循環サイクル
SDGs and HR/Human Resource Development SOMPO version
-virtuous cycle of capital based on human capital
SOMPOグループは、トップクラスの取扱額を誇る損害保険サービスを軸としています。社会活動も積極的に行っており、小学生に贈られる交通安全の黄色い腕章や、ゴッホの「ひまわり」を常設展示するSOMPOミュージアムに馴染みがある人も多いでしょう。近年では、SDGsに積極的に取り組む企業としても注目されています。
また、中期戦略のテーマとしてこのような言葉を掲げています。「“安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことができる社会を実現する」どこか突拍子もないような印象を受けるような言葉です。なぜこのような標語になったのでしょうか。
SOMPOグループの事業の柱は、何と言っても自動車保険です。国内で圧倒的なシェアを誇り、「三大メガ損保」の一角として大きな存在感があります。この事業は、AIの発達によって無くなるかもしれないと言われて久しい分野です。自動運転の普及により事故の件数が減り、責任の所在も変わるため、従来の収益構造が成り立たなくなる可能性があります。ますます激甚化していく災害も、大きく影響しています。火災保険や地震保険が注目を集める一方で、災害が激化するスピードが上回り、保険料の支払いが増えると指摘されています。
このような社会情勢に対応して、2021年の中期経営計画ではSDGs経営を基盤の一つに据えました。また、企業として社会に還元する価値を「SOMPOのパーパス」として事業目的に結びつけています。
SOMPOのパーパス実現に向けて | SOMPOホールディングス
「社会が直面する未来のリスクから人々を守る」「健康で笑顔あふれる未来社会を作る」「多様性ある人材やつながりにより、未来社会を変える力を育む」ということは、そのままSDGsへの取り組みの指針になっています。従業員に対しては、ひとりひとりの心身の健康を守り促進することが重要視されています。グループの経営理念を体現し、生産性を向上し、企業価値を向上することに直接つながると明言されたのが「SOMPOグループ健康宣言」です。他にも、能力開発支援や性別・国籍・年齢などにとらわれない実力主義の人事制度の策定、仕事とプライベートの両立支援、人権リスクの洗い出しと対策を行っています。
このような取り組みの例として、管理型から対話型マネジメントへの移行があります。社員と上司の一対一の面談を重視し、「その人」を生かすための方法を考えていくというやり方です。対話の中で、個人の価値観の重要な部分である「MYパーパス」を見つけ出し、「SOMPOのパーパス」と重なる部分を探します。その重なりに注力し、自ら仕事のモチベーションを生み出せる「セルフ・ドリブン」な働き方を目指すためです。
MYパーパス | SOMPOホールディングス
https://www2.sompo-hd.com/company/purpose/02/index.html#column-03
このような方向性は、コロナ禍でリモートワークが浸透したことを、働き方改革に生かす考え方から生まれました。一対一で価値観を話すインパクトについて、SOMPOホールディングス執行役グループ・チーフ・サスティナビリティ・オフィサーの下川亮子氏は次のように述べています。
下川 亮子氏
「社員はそれぞれ志があり、会社を通じてやりたいことがあるだろう。それを思い出してもらい、火を付けていく。(中略)自分のやりたいことが会社を通じて実現できればより幸せになれる。(中略)その人がどういう人なのか、どんなことをやりたいと思っているのか、本来なら何回か飲み会をしないと分からないようなことがよく分かる。その人のやりたいことが実現できるような仕事を割り当てられるし、プライベートなところで応援することもできる。テレワークが増えている今こそ必要なエモーショナルな部分を含めた理解につながる。」
(SOMPO、持続的成長へ社員を変革(2ページ目) | 日経ESG
https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00005/102200128/?P=2 より引用)
仕事を通じた自分の使命を明確に認識し、自主的に働ける人材を「ミッション・ドリブン」として目指す働き方の一つにとらえています。
SOMPOの働き方改革 | SOMPOの働き方改革 | SOMPOホールディングス
https://www2.sompo-hd.com/company/workstyle/pc/summary/index.html#summary_01
もう一つの特色として、デジタル人材の育成が挙げられます。SOMPOグループでは、国内グループ全社員の約6万人がDX(デジタルトランスフォーメーション)の基礎研修を受講するなどの「デジタル人材育成」構想を立ち上げました。若手だけではなく、年配の社員も対象にした「リスキリング(学びなおし)」の取り組みとして注目を集めています。
利益の約6割を占める自動車保険が、この先縮小していく可能性があるということは、新しい事業の開拓を促しました。すでに、買収や合併を通じて生命保険や介護、デジタルといった様々な事業を手掛けるグループになっています。中でも力を入れているのが、100年の歴史を誇る事業データを活用したプラットフォームを構築し、社会課題を解決するソフトウェアの提供です。そのようなサービスの開発や提案を行える人材を全社的に育てていこう、という意図があります。
SOMPOホールディングスデジタル戦略部の西野大介氏は、その危機感を次のように表しました。「デジタルに弱いままではせっかくの人材が『負債』となる。『資産』として変えていく取り組みが求められている」
(全社員をDX人材へ、SOMPOホールディングスの危機感:日経ビジネス電子版
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00356/112400022/ より引用)
効果的なシステムの構築において、利用者や依頼者の知識も重要なものです。だからこそ、全社員向けの研修に踏み切ったといえます。企業の生き残り戦略と一つになったSDGsの人事・人材育成の例でした。