水産業の人材育成を考える_全国漁業協同組合学校 吉田校長との対談

語り手
全国漁業協同組合学校 校長 吉田博身 氏

聞き手
ヒューマンアバンダンス株式会社(旧・株式会社ビジネス・サクセスストーリー) 代表取締役 川九健一郎

今回は、日本の水産業を守り、そして漁業者の発展に大きく寄与されている全国漁業組合連合会組合学校の吉田博身校長に、これからの日本社会における人材育成にについてお伺いいたしました。産業のベースである一次産業の水産業界、自然を相手にしての人材育成の取り組みは、他の業界においても非常に参考になります。全国漁業組合連合会においてのご経験を踏まえた、現在の組合学校での人材育成の取り組みの根幹に迫ります。

1.新人社員(職員)のパーソナリティの変化

川九 →

新入社員、若手の人材育成の在り方が変わってきたように思います。

以前は、組合学校(「全国業協同組合学校」の略称)で行ったようなグループディスカッションを、新入社員研修でも行っていましたが、素直に話をしてくれていました。答え出ないながらも「あぁでもない、こうでもない」と。

ただ、ここ4、5年の傾向なのですが「川九さん、答え言ってくれればその通りします。グループディスカッションなんか大学の時にやってるので、答え言ってください。その通りにやりますので」と発言するような方もでてくるようになりました。一部の若手ですが。なんか随分変わってきたと感じています。

いわゆる1+1=2ということを素早く正確に計算する能力っていうのは、若年層の方達の能力は非常に高いと感じます。英語だとか多言語を操ることも以前より、高い水準で能力形成している人材も多いです。

ただ、これだけのグローバル化、厳しい市況環境の中で本当に求められる能力っていうものはどのような能力なのでしょうか。

吉田校長 →

私は組合学校の仕事は3年目です。この3年しか知らないんで、変化っていうことではあんまり言えることはありませんが、、、

学校の卒業生が十数人しかいません。それでみんな漁協に就職するんですが、ここのところ毎年辞めるケースが出てきてるんですね。

今までも辞める人はいたんでしょうけれど、割と入って間もなく辞めるということで、問題視してはいます。

色々心配して「なんで辞めたの?あるいはどうしたの?」って本人や比較的親しい卒業生に状況を聞いたりすることはできるんですけど、それを聞いてみると、色々とあるんだけど、やはり人間関係。
辞める時の理由はね、公式にはそういう言い方をしないですが、職場での乱暴な物言いであったり、自分の家族を傷つけるような発言であったり非常に我慢がならないことが原因であったりするそうです。精神的にプレッシャーを感じて、辞めていってるケースなんですね。

また一方で雇っている組織側の言い分もあって、なにが真実かっていうのはよくわからないんですけどね。

川九さんはここ4、5年っておっしゃっていますが、この前たまたま厚生労働省の統計を色々調べていましたら、最近日本全体で勤めて3年以内に辞める人の割合が出てました。大卒で30数パーセント、高卒で40数パーセント、中卒で60数パーセントが3年以内に職場を辞める。すごい率だなと。

川九 →

確かにすごい数値ですね。時代を物語っているような離職率です。

吉田校長 →

そういう意味でいうと漁協に勤める人たちも特別なことはないのかな、まぁ世間並なのかなっていう風に。年に十数人就職して一人ぐらいは辞めるわけですから。

ただ、驚く程ではないと思いながら、マッチングという点では、みんな漁協実習を20日以上行い、漁協の現場を見たうえで就職していま。ある程度の厳しい職場であったりとかは承知の上で入ってるわけだけど、それでもっていうのはあるようです。

その辺が川九さんがおっしゃったところと関係があるのかもしれませんね。

2.組織における教育変化

川九 →

日本の高度経済の成長期を支えてきた日本のよき人事慣行と言われた①終身雇用②年功序列③企業内組合。このような人事慣行、雇用環境の変化が起き、雇用の流動性が高まっています。

ただし、日本は、欧米のように横断的なコミュニケティが確立されているわけではないので、基本的に一社を離れてしまえば所得は下がります。ごく一部の転職成功例を除いては。

ひとつの企業を辞めた方のスキルの成熟が、どうしてもなかなかうまくいかずに、負のスパイラルに陥っていってしまいます。

吉田校長 →

そういう話を聞ききますと、それはやっぱり勤める人の方の変化がなんかあるんでしょうけども、上司の人たちは昔と全く変わらないやり方やっていると思います。自分たちが先輩にされたようにやってると思うんですね。

飲みに誘ったりもしてくれてるとは言うものの、「俺の背中を見て学べ」「もう少し気を利かせろ」「いちいち指図されてやるんじゃなくて一人で動け」と。

だけども若手には、そういったものはどうも気持ちの上では受け入れられない、あるいは反発がある。そのギャップがあるような気がしますね。上の人たちが極端に悪くなったとかいうことでもない。ないけれどもこの現象を見るとやっぱりそれではついていけない人達がいる。あるいはでてきたのでしょうか。昔からあったけど顕在化してきたのか、ということは言えると思うんですね。

この前も管理者の研修会でも伝えてきましたが、「もう俺についてこいでは若い人には簡単にはいかないよ」、と。

やっぱり上に立つ人はOJTでちゃんと教えていくようなある程度スキルで常識を身に着けて努力していかないと、なかなか部下育成や職場定着っていうのは思うようにいかないよ、と。

川九 →

そうですね。

今吉田校長にお話いただいたのはやはり上司がある程度今の若手に合わせていく。

そのスキルを身に着けていきながら、部下指導を行っていくということでしょうか。

3.お互いをリスペクトしあう関係性

川九 →

以前であれば上司にこっぴどく叱られても転職をする選択肢がそもそもありませんから、その企業の中で頑張ってやることしかなかったと思います。

怒られ慣れてないっていうことで行きますと、今企業の中で上司は部下に何か言っちゃいけないみたいな感じがすごく強いですね。

吉田校長 →

色々な問題がありますね。

気を付けて発言をしないといけない世の中になってます。

川九 →

そうすると上司の方などは、余計にコミュニケーションが取りづらくなってるというか…。

そういうのはありますよね。

上司はそんなに以前と変わらず、部下や後輩に接している。

上司は俺が通ってきた道だ。厳しいのは当たり前だと。お前もがんばれと。ということだと思うんですけどね。

吉田校長 →

この前ある地域の漁協を回ってきましたけど。

ある漁業協同組合は3年間地元の高校に募集を出したけれども誰も応募してくれない。一昔前は地元の役場だとか農協だとか漁協っていうのはそれなりの職場でした。

ただ、地域差もありますが最近はあまり人気の少ない職種のようですね。実際は、面白さがわかれば、これだけやりがいのある職場はないと思うんです。そこまで気づいてやる気を出してもらうところまで持っていければいいんですが。

川九 →

今回一緒に研修をやらしていただいた皆様は、やはり理念だとか、そういったものっていうのを解釈・咀嚼していきながら、自分たちに課せられている使命みたいなものっていうのを考えて職場に戻っていただけたらなってことでカリキュラムを考えて研修を実施しました。

吉田校長 →

私は川九さんの研修見てて非常に活発だったでしょ。

なんでかなって考えたらね、やっぱり先生がファシリテーターとして受講者とフラットな感じで威圧感がないんですね。だから自分たちがグループ討議を率先してできるような雰囲気。それはなんでかわからないけど、先生が何か持ってる特殊なキャラクターなのか、それともやり方なのかわからないけど。

そういう関係だと意外と自由に主体的に力が発揮できるような気がしますね。やっぱり。

大変だけれどもフラットな関係っていうか。一人一人がこう最初から尊重されているような関係。

ある先生が言っていました。市民運動は上から目線だとダメだっていうわけです。例えば、大学の先生のような権威者は自分は正しいと。皆さんは知らないんだから正しいことについて来なさいみたいな、ちょっと上から目線があるんじゃないですか。そういうのってとても嫌われる。

対等な立場で、お互いにリスペクトしあう関係で初めてそういう自主的な自立的な運動が成り立つってなことを言っておられました。

これからの市民運動はそういう個々の人のお互いの違いを尊重する。企業においても、お互いの違いを認めながら、お互いに尊敬し合ってリスペクトし合って、そして成長していく。

やはり時代はそういう時代になったのかなと。

4.変化を起こすためのフラットな関係

川九 →

トップダウン、つまり、国があって地方自治体があって市民があってと。国が今までは一般化したものをこのようにいきますよとトップダウンで下してきたんだと思うですが、もう多分それではなかなか市民のニーズの多様化についていけなくなってきているのが現状だと思います。

今考えていますのが、民間企業だとかNPOだとかそういったコミュニティ以外でもっともっと小さいレベルで繋がっていきながら下から上にあげていくっていうことが必要な時代じゃないかなって思っています。

吉田校長 →

理想論かもしれないけど、本当に一人一人の職員なり社員の力を引き出そうとしたらそのぐらいの気構えでやらないといけなくなってきていますね。

そのぐらいのところまで頭を切り替えてやると、職場の先輩であり、経験もある、責任もある、フラットな関係であっても尊重しあえる関係性が築けます。

またフラットな関係であればこそ気が付いた時には叱らないといけない。

怒るんではなくて叱らないといけないという風な形で本気でアドバイスをした時には受け入れられるかもしれない。

川九 →

実は私は、フラットっていうのは結構意識してやっています。

ある会社で女性社員に新しい顧客を創造しようというプロジェクトをしました。「こうやって新しいアプローチをしましょう。こういうことやっていきましょう。」とまぁ一応は正論を伝えし活動していました。そうしましたら、彼女はポロポロ涙して、今まで私は自分のやり方を褒められてきました。川九さんは酷いです。私のことを否定する。

これまでのやり方にプラスして新しいものを取り入れていこうと提案していたのですが、それが従前の彼女を否定したということにとられてしまい、翌日から口をきいてもらえなくなってしまいました。

単純に仕事のやり方の変化ということの話し、そんなに厳しい口調で言ったわけではないのですが。ただ彼女にしてみれば否定したというように受け取られてしまいました。大いに反省しました。

そこからです。正論でこちらが言っても、相手がそれを受け入れられなければ変化はない。変化を起こしていくためには寄り添いながら仕事をしていかないと新しいステージにはいかないなと。

吉田校長 →

私も全漁連で役員になった時にごく親しい人から言われたんだけど。

自然になんか偉そうな振る舞いってあるんですかね。

自分の部下に管楽器が趣味でアフターファイブに楽団のメンバーをやってる人に、それどこでやってるの?とか聞いたことがあります。

「吉田さんそういうのは嫌がられるんですよ。趣味の世界までいちいちそんな聞かなくたっていいでしょ」と。

根ほり葉ほり聞こうとしてたんですね。

無意識なんだけど。

周囲から指摘を受けました。「そんなに聞くのはおかしい」と。あぁなるほどって。

随分反省したけどね。

川九 →

人との関係性の中で相手に興味に持つのは基本だと思うんですが。

吉田校長 →

はい、ただね、よく考えたら興味を持つというのは、どんなジャンルやってんのとかね。

やっぱり本人も素直に話せる話だったらいいけど。

どういうメンバーが集まってるのなんかね。詮索するようなものは避けるべきした。

よくこの忙しいのにそんなにやる暇あるねって言いそうな気配も無きにしも非ずって。

やっぱり敏感に何か感じたんでしょうけどね。聞いてて。

川九 →

そんな感じしないですけどね、吉田校長からそんな細かいこととか。

吉田校長 →

いやいや、私もだいぶ変わりました。笑)

川九 →

そうですか(笑)厳しい時がおありになって。

吉田校長 →

厳しいというか。それは当事者にいる時によくわかんない、やっぱり必死なところもあるし。

やっぱりリタイアして少しゆとりができると少しは考えが丸くなりました。

5.多様性をみとめ、新しい創造性を育む

川九 →

若手の職員の人材育成ということから色々とお話をいただきました。

優秀な方は放っておいても自立的に成長していきます。

よく言う8:2の法則、2:6:2の法則とかっていうところの真ん中くらいにいる方たちをどうやって育成していけるのが一番施策なのかいいのかということを考えます。

例えば人事の世界では、絶対評価と相対評価。絶対評価というのはよくやったことに関しては基本的には絶対に認めてあげると。

ただ相対評価ということでいきますと、10人にいたらAは何人に対しBは何人。考え方がわかれるところです。

ある社長が言うのは評価は相対評価。競争なくして成長はない。

吉田校長 →

相対評価、競争というのはもう当たり前。9割9分、企業はそういう考え方だったんじゃないですか。

ただそれがちょっとうまくいかない職場も出てきている現実がありますね。

日本の企業全体がやっぱり賃金も20年ぐらい上がらないし、単純に言えば景気悪い状況の中で成長が止まっている状況です。

皆が従来より120%にアップしても全員が20%アップしてれば競争っていう意味ではどこの企業もよくならない。

なかなか難しいです。

そういう意味では客観的な状況もあるから、人材育成のテクニカルな部分だけでうまくいったかどうかっていうのはやっぱりよくわかんないなっていうのもありますね。

そういうことの一方でね、やりながらも大枠のところでそういう難しい問題もあるよなっていうことは心の片隅に置いてかからないと。

川九 →

先日の研修時に一緒に皆さん勉強させて頂きましたアメリカのロミンガー社のリーダーシップの開発に重要な比率として7:2:1というのをご紹介させて頂きました。7割が経験だと、2割は薫陶、1割は体系的な教育。この比率がすごく重要なんですとうい主張です。

またある会社の人事部長が結構面白いことを言ってました。

エンゲージメントという指標があります。

100%エンゲージメント状態というと、完全に企業と自己を同一して「この会社のために忠誠を誓う頑張るぞ」となっている状態が100%のエンゲージメント従事している状態です。

それを、ちょっとストレスを与えて、そういう状態からちょっと離れさせるのがポイントだみたいなことを言ってるんですね。

その会社はちょっとストレスを与えるらしいんですよ。

まだこの先があるよっていうのを見せるっていうのが人事の役割だっていうことを言ったりしています。

今色んなあり方の中でやはり多様性ですよね。

多様性の話でいきますと、日本の企業も多様性は必要だとな認知してきてはいます。ただ、何をすればいいの?って感じです。

どの企業も多様性の必要性は認めてきています。これからどうするのっていうのは次の一手がどこも出てきてない。

私は”共通体験”がひとつのキーワードだと主張していますが。

吉田校長 →

企業に対する忠誠度が100%であっても、個人は企業の就業規則、社是、上司と自分、既存の商品だけを見て一生懸命やっているとなれば、発展企業として新しいものはその個人から正直出てこないと思います。

3割でも少しエネルギーを使って映画観たり買い物行ったり、他社の人間と付き合って新しい風を入れて会社のためにアイディアを出そうということのほうが健全です。

今企業なんかがLGBTについて、以前はみんな隠して発表したら企業にいられないような状況だったと思います。そういうことについても堂々と認める。

女性の活躍の問題もそうだし、いろんな人を思想信条であれ趣味であれ価値観であれ色んなことを認めた中でやってく。

違いを認めてお互いにリスペクトして、そうして接点を見つけてやっていくっていう考え方で相通ずるところはあると思います。

川九 →

御組織の組織風土はいかがでしょうか?

吉田校長 →

ここの職場の職員はものすごく人がいいと外部から聞くことがあります。

人間的に素直で本当にいい人間が揃っている。

揃ってるっていうのはほかの企業に比べてという意味です。

例えば、別の組織から役員で来た人が、自分のいた元の職場に比べても、人間性は素晴らしいと。

伝統的に個人を縛ってこなかったし、比較的自由な雰囲気はある。

また、いくら計画立てても漁業は、自分たちの責任だけではつきつめられない自然相手の仕事という側面もある。

言い訳になるかもしれないけど。案外それって意外とポイントのところがあって。

そういういいところがあると思うんです。

川九 →

漁協に従事する方々の能力形成でいきますと、自然と向き合ってやっていかなければなりません。

また現場で漁業を行う方、全漁連の職員の方であったりと能力形成には少しずつ違いがある思うんですが。

どういった能力形成ができると、組織の理念に合致して働いていける人はどういった人がいいんでしょうか。

吉田校長 →

人は能力というか、ある程度あるんで、あれもこれもとは言いいません。

私は全漁連も漁協の職員もそうですけど協同組合、漁協で働く人間はある意味二刀流じゃなくちゃいけいないと思っています。

あるいは文武両道って言ってもいいんですが。

どういう意味かっていうと、やはり今は自由競争の社会です。

社会の中ではやっぱり一般企業が当然にやってるようことは責任を持って改革していくのは当たり前のこと。

例えば、債権者には滞りなく返済する、当たり前のことを当たり前にやるってことは当然やらなくちゃいけない。

財務諸表を見ることから始まってコンプライアンス守る、商品に関する知識も。

そのうえでこの漁業協同組合っていうのは何かっていうと最終目的は水協法の第四条に書いてあるように、漁業者に奉仕することがこの水協法によってできた組合の目的です。

当然、食料の生産に携わる、それから海の環境を守る番人であり、なおかつ漁村地域を振興させていく地域創生の核になれるんだという社会的な使命を、一方で心で誇りに思って、自分の家族に対してもこういう仕事をやっているってことを聞かれたら言えるようにして欲しいです。

頑張って仕事をしていくっていう最高のモチベーションが出てくるはずなんです。

 国際協同組合同盟が確認している七つの原則っていうのがあります。

できるならばその表れが、自分の職場のことを「うちの会社」といわずに、言いづらいだろうけど「全漁連」だとか「うちの組合」はと言うことをはじめ、会社じゃない組織形態、協同組合なんだってことを常に意識して欲しい。

違いを認めてお互いにリスペクトして、そうして接点を見つけてやっていくっていう考え方で相通ずるところはあると思います。

川九 →

そうなんですね。

最近特に思いますのが、情報の取扱いが難しい世の中になってきています。

ビジネスの世界でいきますと、とにかく今Webの中で適切な情報というのを判断しづらくなっています。

だまされる方が悪いというような状況です。

 全漁連での研修の時に常にお話を一緒にさせてもらってるのですが、大手流通チェーンが魚を販売していく中で、浜値と比較すると浜値よりも大手流通チェーンで並んでる価格の方が安いものがあります。

それを何とか適切な価格に、漁業者の方たちが適切な対価を得られるような社会になっていけばいいなぁと思います。

北海道報徳社の先生もおっしゃってましたが、大手流通チェーンはどちらかの地域に経済性を求め入って行く。

ただ、うまくいかなくなったら引き上げればいいだけの話です。

そうすると地域、街は崩壊します。経済性だけの話ではないのです。

経済性に偏重し過ぎると、どうしても地域社会をどのように創っていくかという視点がなくなっていきます。

吉田校長 →

水産経済新聞って業界紙ご存知でしょうか。

先日、水産経済新聞の主催でセミナーで話を聞きました。

地方の流通についてちょっと考えないといけない。

大手流通チェーンが産地のフェアだとして、色々やるけど、その時の値段というのはとても安いと。

生産者が報われていない。そういうようなことも講師が言っていました。

川九 →

一旦値段が出れば、その価格が先行していきます。

消費者としては安い値段で美味しい魚を食べられていいと思いますが、漁業者が生活していくのも四苦八苦するみたいな状況になっています。

私は北海道の標津に仕事でいっています。

北海道も鮭がとれなくなってきています。

これからどうするんだって話になった時に次の一手ってなかなかないんです。

そして、漁業者の高齢化が進んで、次世代の後継者がいないという話になります。

吉田校長 →

流通の問題も漁業の場合、組合員は自分が獲った魚を売ってなんぼって経営の根幹なんで、いつも何年に一度かの全国漁協大会、名称は変わっていますけれども、それに向けて組合員のアンケートを取るけど、圧倒的に漁協に対する期待っていうのは販売事業に対する期待なんです。

油が高いときはやはり高い高い言ってたけど、とにかく魚の値段をなんとかしたい。

しかし、20年間サラリーマンの給料が上がらない。

一方では医療費だとか教育費だとか通信費だとか上がっている中、食費は切り詰められてます。

そういう中でブランド化だとか直販とか直売所とかみんなが一斉に努力して同じように競争しだす。

するとそれが当然のレベルになる。現実を言うと、そんなに甘くない。

実際に魚が高くなって資材は安くなって直接的な利益を受けるということももちろん必要だけど、やっぱり教育研修、広報の重要性って協同組合原則の5番目にあるんです。

世の中のことをよく知って自分たちの商品のおかれてる位置をよく知って、そして自分の意思で漁協の販売事業に関わっていく、そういうことによって満足を得るっていうのこともあります。

川九 →

お話をお伺い、やはり漁業に従事していることによっての“やりがい”や“誇り”だとかそういったものを感じていただき、次の日本の漁業を作っていく!っていうように、皆さんが思いながら働いていけるといいですね。

6.組織の在り方について考えて欲しいこと

吉田校長 →

株式会社と漁業協同組合について言えば、株式会社は今の社会では主流で圧倒的組織は株式会社です。特にグローバル企業になってくると、やっぱり四半期ごとの経営評価であったり半年ごとの配当であったり、色んなステークホルダーがあるけどもやっぱり株主配当は経営者の意識の最初に来るから、商品開発するにしても、そこを踏まえたものになるでしょう。

我々の場合のステークホルダーは誰かっていうと出資者である漁業者、連合会にとってみたら会員。やはりその人たちのために仕事をするっていうことですからね。

だから自分の職場のことを会社っていうのは、会社は職場と同義ということになるから責められない面もあるけれども、やっぱり組合員をお客様だと思っているうちはまだ本当にわかってはいないですね。

組合員は、自分たちのオーナーなんですからね。

組合員は、三位一体で出資者であり、利用者であり、そして運営・参加者っていうそのことをどこまで理解した上でその人たちのために働いているか。

その人たちをお客様扱いしないで、本当に自分が一緒になって、その人たちのコーディネーターとして活動し、一緒になって案を作り出して、このダイナミズムの域にまでいけたら最高ですね。でもその可能性はある。

 北海道報徳社の柴田さんが言ってましたね。

以前、全農の太田寛一さん、全農の会長をやってた北海道出身の。

松下幸之助さんと親しい間柄で、二人が対談した時の話。農協は、何かを決めるにしても合意に時間がかかる、松下幸之助さんがうらやましいと太田さんが言ったのかな。そうしたら、逆に、自分の所に比べて、かんかんがくがく議論する農協がうらやましいとの趣旨の話をされたと。

協同組合は、合意まで時間がかかるが、納得して、結束したら強いですから。簡単には崩れない。

協同組合は特質があるから、そこのところをよく踏まえて、そこをどう活かせるかというところから考えないとね。

川九 →

しっかりと議論をできる組織風土が今の組織を創っているのですね。

7.教育会社に期待すること

川九 →

最後に、弊社、教育に携わる組織はどんなことを期待されますか?

吉田校長 →

この前、福岡で研修やったら、地元の経営コンサルタントの女性の方が2時間ぐらいグループ討論やって、そのあと2時間私の話をやってセットでやりました。私の話は、主に協同組合、漁業だとかが中心になります。

その方は、組織・企業としての当然のコミュニケーションだとか、幹部の研修だったので、所長の役割だとかの話されてました。

やっぱり、さっき言ったように協同組合と経営知識・マネジメントなどの両方やっていかないといけないと思います。

川九 →

協同組合の考え方の浸透、それと、別の視点、一般的な組織が継続していく上での知識などが必要とことですね。

引き続き、よい組織風土を保ちながら、日本の漁業を担う人材の育成に取り組ませください。

長時間にわたりありがとうございました。

 

おわり